紀元前から現代へ、二千年の星空の旅
二千年の間、空をあおぎ続けられるとしたら何が見えるだろうか。めまぐるしく変わるものと変わらないもの。
シミュレーションが描き出す天体の軌跡は天空の旋律のようだった。
紀元前のある日の星の動き
地球が1日に1回自転するため星も空を1周する。これを日周運動という。わたしたちが北極星とよんでいるこぐま座αは現在日周運動の北の中心にあるが、当時はずれていた。実際には、太陽が昇ると空が明るくなり星は見えなくなるが、映像では昼空の明るさを消して星が常に見えるようにした。
不動の星座と太陽系の天体の軌跡
東から昇ったばかりのオリオン座を毎日正面に見続けることにして時間を進める。星座を形作る恒星は動かないが、太陽や惑星たちが軌跡を描いて移動しているのがわかる。紀元前240年には、76年に1回太陽への接近を繰り返しているハレー彗星の出現記録を再現している。
惑星の逆行
地球から見る惑星の動きは複雑です。夜空に見える惑星たちは、日が進むにつれて東へ東へと星座を渡り歩くように動いていきます。この運動を順行とよびます。ところが、地球の外側を公転する惑星を地球が追い抜くとき、その惑星が背景の星座に対して立ち止まるように見えたり東から西へ逆行するように見えたりします。
紀元前のある日の星の動き
20億倍のスピードで時間を進め、千年を10秒足らずで飛び越えてみよう。太陽の軌跡は一本の線(黄道)になり、その周囲に帯のように月や惑星の存在範囲があるのがわかる。それでも星座の形はくずれないが、空全体は歳差運動でゆっくり傾いていく。星の一生の最期を飾る大爆発(超新星爆発)がこの空では3つほど見えるはずだ。
惑星の逆行
地球は一日一周の自転運動をしています。この自転軸を地軸といいます。その地軸を宇宙へとのばした方向を「天の北極(あるいは天の南極)」といいます。現在は天の北極のすぐ近くに北極星があります。回転するコマが首振り運動をするように地軸も首振り運動をしており、これを歳差運動といいます。歳差運動では地軸が1周2万5800年かけて円を描くように動きます。長い年月の間には地軸の方向が北極星からしだいにずれていき、現在の北極星はやがて北の方角の目印にはならなくなります。遠い将来には別の星が北極星と呼ばれることになるでしょう。
作品に込めた最大の問い―千年後に星座は残っているだろうか?―KAGAYA
本編の最後にたどり着いたのは千年後の未来。はたしてその世界に星座は残っているだろうか。
千年たってもわたしたちなじみの恒星の配列はそのまま残っているだろう。しかし、それを見上げる人間はそこにいるだろうか。
人類が今直面している問題だけでなく、千年の間にはわたしたちには想像もつかないような危機が訪れるかもしれない。それらを解決して、星座を見上げるべき人間が生き延びていなければならないのだ。
さらに、人間が残っているだけでは星座は残らないかもしれない。
千年の間、星座という文化を伝えていけるだけの教養と情緒を持ち続け、また、未来の夜空は人工光で昼のように照らされず、自然の暗さを保っていなければならない。そうでなければ、星座はたちまち過去のものとなってしまうだろう。
本編の千年後の未来、気配はするものの、人の姿は見えない。その有無がみなさまへの問いだ。
わたしは「正義」という言葉が鍵をにぎっていると思う。
神話によると、現代は正義が失われた鉄の時代が続いている。この時代に生まれたわたしたちにとって、一人一人が本当の「正義」を判断することは難しい。だから英知を集結して話し合い、思いやりと科学の力で模索していくべきではないだろうか。
ときには星空を見上げ、宇宙の中の人類のありかたを確かめる必要もあるだろう。
人類が今の時代を乗り越え、新たな神話を作るとき、地上で再び「正義(アストライア)」が微笑むのかもしれない。
そんな未来を願うばかりである。